9.2. 全般的なネットワークの設定

本節はネットワークカードを設定する場合にのみ作業を行っていきます。

9.2.1. ネットワークインターフェースの設定ファイル

systemd はバージョン 209 から、ネットワーク設定を行うデーモン systemd-networkd を提供するようになりました。 このデーモンが基本的なネットワーク設定を行います。 さらにバージョン 213 からは、DNS 名前解決を固定的に /etc/resolv.conf ファイルによって行っていたものが systemd-resolved により行うよう変更されています。 いずれのデーモンもデフォルトで有効となっています。

[注記]

注記

ネットワーク設定に systemd-networkd を利用しない場合(たとえばネットワークに接続しないシステムを利用する場合や、NetworkManager のようなネットワーク設定を行う別ユーティリティーを利用する場合)は、起動時にエラーメッセージが表示されないように、サービスを無効にしてください。

systemctl disable systemd-networkd-wait-online

systemd-networkd (および systemd-resolved) に対する設定ファイルは /usr/lib/systemd/network ディレクトリまたは /etc/systemd/network ディレクトリに置きます。 /usr/lib/systemd/network ディレクトリにある設定ファイルよりも /etc/systemd/network ディレクトリにある設定ファイルの方が優先されます。 設定ファイルには .link, .netdev, .network の三種類があります。 これらの説明や設定例については man ページ systemd.link(5), systemd.netdev(5), systemd.network(5) を参照してください。

9.2.1.1. ネットワークデバイスの命名

通常 Udev は、システムの物理的な特性に従った enp2s1 などのような名称をネットワークカードインターフェースに割り当てます。 インタフェース名が分からない場合は、システム起動直後に ip link を実行して確認してください。

[注記]

注記

インターフェース名は、システム上で起動している udev デーモンの実装や設定に依存します。 LFS における udev デーモン(「Systemd-256.4」においてインストール)は、LFS システムを起動させるまでは動作しません。 したがってホストディストリビューションにおいて各コマンドを実行しても、LFS 上において用いられるインターフェース名が何であるのかは特定できません。 それは chroot 環境内においても同じことです。

システムにおいて、接続タイプに応じたネットワークインターフェースは、それぞれに 1 つであるのが通常です。 例えば有線接続のインターフェース名は、従来より eth0 とされます。 また無線接続の場合は wifi0 や wlan0 といった名前が用いられます。

ネットワークインターフェース名を従来どおりとしたり、カスタマイズしたりするには、以下に示す 3 通りの方法があります。

  • udev のデフォルトポリシーに対する .link ファイルをマスクして無効にします。

    ln -s /dev/null /etc/systemd/network/99-default.link
  • インターフェースに対する名前として internet0, dmz0, lan0 といった命名スキームを自分で定めます。 これを行うには /etc/systemd/network/ ディレクトリに .link ファイルを生成し、必要なインターフェースに対して具体的な名前、つまりより良い命名スキームを定めます。 例えば以下のようにします。

    cat > /etc/systemd/network/10-ether0.link << "EOF"
    [Match]
    # Change the MAC address as appropriate for your network device
    MACAddress=12:34:45:78:90:AB
    
    [Link]
    Name=ether0
    EOF

    詳細は systemd.link(5) を確認してください。

  • /boot/grub/grub.cfg ファイル内において、カーネルの設定行に net.ifnames=0 を追加します。

9.2.1.2. 固定 IP アドレスの設定

以下のコマンドは固定IPアドレスの設定を行う設定ファイルを生成するものです。 (systemd-networkd と systemd-resolved を利用します。)

cat > /etc/systemd/network/10-eth-static.network << "EOF"
[Match]
Name=<network-device-name>

[Network]
Address=192.168.0.2/24
Gateway=192.168.0.1
DNS=192.168.0.1
Domains=<Your Domain Name>
EOF

複数のDNSサーバーを有している場合は、DNS設定行を複数指定することができます。 固定的に /etc/resolv.conf ファイルを利用する場合は DNS および Domains の設定行は記載しません。

9.2.1.3. DHCP 設定

以下のコマンドは IPv4 DHCP 設定を行う設定ファイルを生成します。

cat > /etc/systemd/network/10-eth-dhcp.network << "EOF"
[Match]
Name=<network-device-name>

[Network]
DHCP=ipv4

[DHCPv4]
UseDomains=true
EOF

9.2.2. /etc/resolv.conf ファイルの生成

インターネットへの接続を行う場合には、ドメイン名サービス (domain name service; DNS) による名前解決を必要とします。 これによりインターネットドメイン名を IP アドレスに、あるいはその逆の変換を行います。 これを行うには ISP やネットワーク管理者が指定する DNS サーバーの割り振り IP アドレスを /etc/resolv.conf ファイルに設定します。

9.2.2.1. systemd 解決による設定

[注記]

注記

ネットワークインターフェース設定を systemd-resolved とは別の方法 (例えば ppp など) で行う場合、 または別のタイプのローカルリゾルバー (local resolver; たとえば bind や dnsmasq や unbound など) や /etc/resolv.conf を生成するソフトウェア (つまり systemd が提供するものでない resolvconf プログラム) などを用いる場合、systemd-resolved サービスは用いてはなりません。

systemd-resolved を無効にするには、以下のコマンドを実行します。

systemctl disable systemd-resolved

DNS 設定に systemd-resolved を用いると /run/systemd/resolve/resolv.conf ファイルが生成されます。 また /etc/resolv.conf が存在していない場合は、systemd-resolved/run/systemd/resolve/stub-resolv.conf へのシンボリックリンクとして生成します。 その場合は /etc/resolv.conf を手動で生成する必要はありません。

9.2.2.2. スタティックな resolv.conf 設定

スタティックな /etc/resolv.conf ファイルを必要とする場合は、以下のコマンドにより生成します。

cat > /etc/resolv.conf << "EOF"
# Begin /etc/resolv.conf

domain <Your Domain Name>
nameserver <IP address of your primary nameserver>
nameserver <IP address of your secondary nameserver>

# End /etc/resolv.conf
EOF

domain ステートメントは省略するか、search ステートメントで代用することが可能です。 詳しくは resolv.conf の man ページを参照してください。

<IP address of the nameserver> (ネームサーバーの IP アドレス) の部分には、DNS が割り振る適切な IP アドレスを記述します。 IP アドレスの設定は複数行う場合もあります。(代替構成を必要とするなら二次サーバーを設けることでしょう。) 一つのサーバーのみで十分な場合は、二つめの nameserver の行は削除します。 ローカルネットワークにおいてはルーターの IP アドレスを設定することになるでしょう。 これ以外の方法として、IP アドレスに Google Public DNS サービスをネームサーバーとして利用する方法もあります。

[注記]

注記

Google Public IPv4 DNS アドレスは 8.8.8.88.8.4.4 です。 また IPv6 では 2001:4860:4860::88882001:4860:4860::8844 です。

9.2.3. ホスト名の設定

システム起動時には /etc/hostname が参照されてシステムのホスト名が決定されます。

以下のコマンドを実行することで /etc/hostname ファイルを生成するとともに、ホスト名を設定します。

echo "<lfs>" > /etc/hostname

<lfs> の部分は、各システムにおいて定めたい名称に置き換えてください。 ここでは完全修飾ドメイン名 (Fully Qualified Domain Name; FQDN) は指定しないでください。 その情報は /etc/hosts ファイルにて行います。

9.2.4. /etc/hosts ファイルの設定

完全修飾ドメイン名 (Fully Qualified Domain Name; FQDN)、エイリアスの各設定は /etc/hosts ファイルにて行います。 固定アドレスを用いる場合は IPアドレスを定める必要があります。 ホストファイルの文法は以下のとおりです。

IP_address myhost.example.org aliases

インターネットに公開されていないコンピューターである場合 (つまり登録ドメインであったり、あらかじめ IP アドレスが割り当てられていたりする場合。 普通のユーザーはこれを持ちません。) IP アドレスはプライベートネットワーク IP アドレスの範囲で指定します。 以下がそのアドレス範囲です。

Private Network Address Range      Normal Prefix
10.0.0.1 - 10.255.255.254           8
172.x.0.1 - 172.x.255.254           16
192.168.y.1 - 192.168.y.254         24

x は 16 から 31、y は 0 から 255 の範囲の数値です。

IP アドレスの例は 192.168.1.1 となります。

インターネット上にコンピューターを公開しようとする場合、正しい FQDN はドメイン名そのものか、あるいはプレフィックス(たいていはホスト名)とドメイン名を.でつなげて記述します。 そしてドメインプロバイダーに問い合わせて、FQDN を公開 IP アドレスとして解決する必要があります。

インターネット上にコンピューターが公開されていない場合であっても、特定のプログラム、たとえば MTA などにおいては、正常な処理が行われるように FQDN が必要になります。 特別な FQDN localhost.localdomain は、その目的で利用されます。

以下のようにして /etc/hosts ファイルを生成します。

cat > /etc/hosts << "EOF"
# Begin /etc/hosts

<192.168.0.2> <FQDN> [alias1] [alias2] ...
::1       ip6-localhost ip6-loopback
ff02::1   ip6-allnodes
ff02::2   ip6-allrouters

# End /etc/hosts
EOF

<192.168.0.2>, <FQDN> の部分は利用状況に応じて書き換えてください。 (ネットワーク管理者から IP アドレスを指定されている場合や、既存のネットワーク環境に接続する場合など。). エイリアスの記述は省略しても構いません。 また <192.168.0.2> の行も、DHCP や IPv6 による自動設定による接続を行う場合、あるいは FQDN として localhost.localdomain を指定する場合には省略可能です。

/etc/hostname には localhost, localhost.localdomain, (ドメイン名を含まない)ホスト名は記述しません。 これらは NSS モジュール myhostname が取り扱います。 詳しくは man ページ nss-myhostname(8) を参照してください。

::1 という項目は IPv6 における 127.0.0.1 に相当し、IPv6 のループバックインターフェースを表します。