ユーザー名前空間内において稼働するアプリケーションは、カーネルが生成するさまざまなファイルシステムを使って、カーネルとのやり取りを行います。 これらのファイルシステムは仮想的なものであり、ディスクを消費するものではありません。 ファイルシステムの内容はメモリ上に保持されます。 こういったファイルシステムは $LFS ディレクトリツリー内にマウントされていなければならず、それができて初めて、アプリケーションが chroot 環境内にてそれを認識できるようになります。
この仮想ファイルシステムがマウントされるディレクトリを、以下のようにして生成します。
mkdir -pv $LFS/{dev,proc,sys,run}
LFS システムの通常のブートの際に、カーネルは /dev
ディレクトリ上に devtmpfs
ファイルシステムを自動的にマウントします。 カーネルはブートプロセスを通じて、仮想ファイルシステム上にデバイスノードを生成します。
またデバイスが初めて検出されるかアクセスされるかした際に生成します。 udev
デーモンは、カーネルが生成したデバイスノードの所有者やパーミッションを変更することがあります。
またディストリビューション管理者やシステム管理者の作業をやりやすくするために、新たなデバイスノードやシンボリックリンクを生成することもあります。
(詳しくは 「デバイスノードの生成」 を参照してください。) ホストのカーネルが
devtmpfs
をサポートしている場合は、devtmpfs
を $LFS/dev
上に簡単にマウントすることができ、デバイスの有効化をカーネルに委ねることができます。
しかしホストカーネルの中には、devtmpfs
をサポートしていないものがあり、そういったディストリビューションでは /dev
の内容を別の手法によって実現しています。 そこでホストに依存せずに
$LFS/dev
ディレクトリを有効にするには、ホストシステムの
/dev
ディレクトリをバインドマウントします。
バインドマウントは特殊なマウント方法の一つであり、ディレクトリのサブツリーやファイルを、別の場所から見えるようにするものです。
以下のコマンドにより実現します。
mount -v --bind /dev $LFS/dev
残りの仮想カーネルファイルシステムを以下のようにしてマウントします。
mount -vt devpts devpts -o gid=5,mode=0620 $LFS/dev/pts mount -vt proc proc $LFS/proc mount -vt sysfs sysfs $LFS/sys mount -vt tmpfs tmpfs $LFS/run
devpts に対するマウントオプションの意味
gid=5
このオプションは、devpts により生成されるデバイスノードを、グループID が 5 となるようにするものです。 この
ID は、この後に tty
グループにおいて利用します。
ここではグループ名ではなくグループ ID を用いるものとしています。 この理由は、ホストシステムが
tty
グループに対して異なる ID
を利用していることがあるためです。
mode=0620
このオプションは、devpts により生成されるデバイスノードのモードを 0620 にします。 (所有ユーザーが読み書き可、グループが書き込み可) 前のオプションとともにこのオプションを指定することによって、devpts が生成するデバイスノードが grantpt() の要求を満たすようにします。 これはつまり、Glibc の ヘルパーコマンド pt_chown (デフォルトではインストールされない) が必要ないことを意味します。
ホストシステムによっては /dev/shm
が通常
/run/shm
へのシンボリックリンクになっているものがあります。
上の作業にて /run tmpfs
がマウントされましたが、これを行うのはこのディレクトリを適切なパーミッションにより生成する必要がある場合のみです。
別のホストシステムでは /dev/shm
が tmpfs
へのマウントポイントの場合があります。 その場合 /dev のマウントは /dev/shm をchroot
環境内のディレクトリとして生成します。 この状況においては tmpfs を明示的にマウントしなければなりません。
if [ -h $LFS/dev/shm ]; then install -v -d -m 1777 $LFS$(realpath /dev/shm) else mount -vt tmpfs -o nosuid,nodev tmpfs $LFS/dev/shm fi