9.7. システムロケールの設定

以降に示す /etc/locale.conf ファイルは言語を設定するために必要となる環境変数を定義します。 これを設定することによって以下の内容が定められます。

以下において <ll> と示しているものは、言語を表す2文字の英字 (例えば en) に、また <CC> は、国を表す2文字の英字 (例えば GB) にそれぞれ置き換えてください。 <charmap> は、選択したロケールに対応したキャラクターマップ (charmap) に置き換えてください。 オプションの修飾子として@euroといった記述もあります。

以下のコマンドを実行すれば Glibc が取り扱うロケールを一覧で見ることができます。

locale -a

キャラクターマップにはエイリアスがいくつもあります。 例えばISO-8859-1iso8859-1iso88591として記述することもできます。 ただしアプリケーションによってはエイリアスを正しく取り扱うことができないものがあります。 (UTF-8 の場合、UTF-8と書かなければならず、これをutf8としてはならない場合があります。) そこでロケールに対する正規の名称を選ぶのが最も無難です。 正規の名称は以下のコマンドを実行すれば分かります。 ここで <locale name>locale -a コマンドの出力から得られたロケールを指定します。 (本書の例ではen_GB.iso88591としています。)

LC_ALL=<locale name> locale charmap

en_GB.iso88591ロケールの場合、上のコマンドの出力は以下となります。

ISO-8859-1

出力された結果がen_GB.ISO-8859-1に対するロケール設定として用いるべきものです。 こうして探し出したロケールは動作確認しておくことが重要です。 Bash の起動ファイルに記述するのはその後です。

LC_ALL=<locale name> locale language
LC_ALL=<locale name> locale charmap
LC_ALL=<locale name> locale int_curr_symbol
LC_ALL=<locale name> locale int_prefix

上のコマンドを実行すると、言語名やロケールに応じたキャラクターエンコーディングが出力されます。 また通貨や各国ごとの国際電話番号プレフィックスも出力されます。 コマンドを実行した際に以下のようなメッセージが表示されたら、第 8 章にてロケールをインストールしていないか、あるいはそのロケールが Glibc のデフォルトのインストールではサポートされていないかのいずれかです。

locale: Cannot set LC_* to default locale: No such file or directory

このエラーが発生したら localedef コマンドを使って、目的とするロケールをインストールするか、別のロケールを選ぶ必要があります。 これ以降の説明では Glibc がこのようなエラーを生成していないことを前提に話を進めます。

LFS には含まれない他のパッケージにて、指定したロケールをサポートしていないものがあります。 例えば X ライブラリ (X ウィンドウシステムの一部) では、内部ファイルに指定されたキャラクターマップ名に合致しないロケールを利用した場合に、以下のようなメッセージを出力します。

Warning: locale not supported by Xlib, locale set to C

Xlib ではキャラクターマップはたいてい、英大文字とダッシュ記号を用いて表現されます。 例えば "iso88591" ではなく "ISO-8859-1" となります。 ロケール設定におけるキャラクターマップ部分を取り除いてみれば、適切なロケール設定を見出すことができます。 これはまた locale charmap コマンドを使って、設定を変えてみてロケールを指定してみれば確認できます。 例えば "de_DE.ISO-8859-15@euro" という設定を "de_DE@euro" に変えてみて Xlib がそのロケールを認識するかどうか確認してみてください。

これ以外のパッケージでも、パッケージが求めるものとは異なるロケール設定がなされた場合に、適切に処理されないケースがあります。 (そして必ずしもエラーメッセージが表示されない場合もあります。) そういったケースでは、利用している Linux ディストリビューションがどのようにロケール設定をサポートしているかを調べてみると、有用な情報が得られるかもしれません。

適切なロケール設定が決まったら /etc/locale.conf ファイルを生成します。

cat > /etc/locale.conf << "EOF"
LANG=<ll>_<CC>.<charmap><@modifiers>
EOF

/etc/locale.conf ファイルは systemd のユーティリティープログラム localectl を使って定めることもできます。 例えば上と同じ設定を行うには以下を実行します。

localectl set-locale LANG="<ll>_<CC>.<charmap><@modifiers>"

言語に関連する環境変数、例えば LANG, LC_CTYPE, LC_NUMERIC などや、locale が出力する環境変数を指定することもできます。 その場合は各設定をスペースにより区切ります。 例として LANG を en_US.UTF-8 とし LC_CTYPE を単に en_US とする場合は以下のようにします。

localectl set-locale LANG="en_US.UTF-8" LC_CTYPE="en_US"
[注記]

注記

localectl コマンドは chroot 環境内では動作しない点に注意してください。 systemd を使って LFS システムを起動したときになって、初めて利用できるものです。

ロケール設定のC(デフォルト) とen_US(米国の英語利用ユーザーに推奨) は異なります。 Cは US-ASCII 7 ビットキャラクターセットを用います。 もし最上位ビットがセットされたキャラクターがあれば不適当なものとして取り扱います。 例えば ls コマンドにおいてクエスチョン記号が表示されることがあるのはこのためです。 また Mutt や Pine などにより電子メールが送信される際に、そういった文字は RFC には適合しないメールとして送信されます。 送信された文字は不明な 8ビット (unknown 8-bit)として示されます。 そこで 8ビット文字を必要としないことが明らかな場合にはCロケールを指定してください。