6.18. GCC-13.2.0 - 2回め

GCC パッケージは C コンパイラーや C++ コンパイラーなどの GNU コンパイラーコレクションを提供します。

概算ビルド時間: 4.3 SBU
必要ディスク容量: 4.8 GB

6.18.1. GCC のインストール

GCC の 1 回めのビルドと同様に、ここでも GMP、MPFR、MPC の各パッケージを必要とします。 tarball を解凍して、所定のディレクトリに移動させます。

tar -xf ../mpfr-4.2.0.tar.xz
mv -v mpfr-4.2.0 mpfr
tar -xf ../gmp-6.3.0.tar.xz
mv -v gmp-6.3.0 gmp
tar -xf ../mpc-1.3.1.tar.gz
mv -v mpc-1.3.1 mpc

x86_64 上でビルドしている場合は、64ビットライブラリのデフォルトディレクトリ名をlibにします。

case $(uname -m) in
  x86_64)
    sed -e '/m64=/s/lib64/lib/' -i.orig gcc/config/i386/t-linux64
  ;;
esac

libgcc と libstdc++ のヘッダーのビルドルールを変更して、これらのライブラリに対して POSIX スレッドサポートを含めてビルドするようにします。

sed '/thread_header =/s/@.*@/gthr-posix.h/' \
    -i libgcc/Makefile.in libstdc++-v3/include/Makefile.in

専用のディレクトリを再度生成します。

mkdir -v build
cd       build

GCC のビルドに入る前に、デフォルトの最適化フラグを上書きするような環境変数の設定がないことを確認してください。

GCC をコンパイルするための準備をします。

../configure                                       \
    --build=$(../config.guess)                     \
    --host=$LFS_TGT                                \
    --target=$LFS_TGT                              \
    LDFLAGS_FOR_TARGET=-L$PWD/$LFS_TGT/libgcc      \
    --prefix=/usr                                  \
    --with-build-sysroot=$LFS                      \
    --enable-default-pie                           \
    --enable-default-ssp                           \
    --disable-nls                                  \
    --disable-multilib                             \
    --disable-libatomic                            \
    --disable-libgomp                              \
    --disable-libquadmath                          \
    --disable-libsanitizer                         \
    --disable-libssp                               \
    --disable-libvtv                               \
    --enable-languages=c,c++

configure オプションの意味

--with-build-sysroot=$LFS

通常は --host を用いれば、GCC ビルドにクロスコンパイラーが用いられ、参照すべきヘッダーやライブラリも $LFS にあるものが用いられるように指示されます。 しかし GCC 向けのビルドシステムは別のツールを使っているので、上のような場所を認識できていません。 本スイッチは、そのツール類が必要とするファイルを、ホスト内からではなく、$LFS から探し出すようにします。

--target=$LFS_TGT

GCC はクロスコンパイルによって作り出してきているので、コンパイル済み GCC 実行ファイルからターゲットライブラリ(libgcclibstdc++) をビルドして作り出すことができません。 なぜならその実行ファイルはホスト上で動作させられないからです。 GCC ビルドシステムはその回避策として、デフォルトではホスト上にある C および C++ コンパイラーを利用しようとします。 ただし GCC のバージョンが異なる場合に、GCC ターゲットライブラリをビルドすることはサポートされていません。 したがってホスト上のコンパイラーがビルドに失敗する可能性があります。 本パラメーターは、確実に GCC 1回めの実行ファイルを使ってライブラリビルドを行うようにします。

LDFLAGS_FOR_TARGET=...

GCC 1回めではスタティックバージョンの libgcc をビルドしていましたが、ここでは共有の libgcc をビルドするようにします。 これは C++ 例外処理のために必要となります。

--disable-libsanitizer

GCC のサニタイザーランタイムライブラリを無効にします。 これはここでの一時的インストールにおいては不要です。 本スイッチは、インストールターゲットにおいて libcrypt がインストールされていない状況で GCC をビルドする場合に必要となります。 gcc 1 回め においては、--disable-libstdcxx によって暗にそれを行っていましたが、ここではそれを明示的に行う必要があります。

パッケージをコンパイルします。

make

パッケージをインストールします。

make DESTDIR=$LFS install

最後に、便利なシンボリックリンクを作成します。 プログラムやスクリプトの中には gcc ではなく cc を用いるものが結構あります。 シンボリックリンクを作ることで各種のプログラムを汎用的にすることができ、通常 GNU C コンパイラーがインストールされていない多くの UNIX システムでも利用できるものになります。 cc を利用することにすれば、システム管理者がどの C コンパイラーをインストールすべきかを判断する必要がなくなります。

ln -sv gcc $LFS/usr/bin/cc

本パッケージの詳細は 「GCC の構成」を参照してください。